ファンクショナルフード学会は11日、東京・日比谷コンベンショナルホールで「第16回学術集会」を開催した。当日は医療関係者、健康食品、食品関係者など約80人が参加し、活発な意見交換が行われた。
大会長である東京農工大学大学院生命工学専攻 稲田全規准教授は、運動器系疾患における食品由来機能性因子の作用解析と題した講演を行い、フラボノイドなどのポリフェノール類の生理活性評価に焦点を当てて、最新の研究を報告した。OA等に関連する運動器の骨代謝調節機能については、細胞を用いた機能性評価から、質量分析イメージングを活用した個体解析までの知見を紹介。柑橘由来のノビレチンは、抗酸化作用のみならず、骨芽細胞に対する効果や破骨細胞形成に関わるCOX-2 および PGE2 産生を抑制することが見出されており、抗炎症作用につながる可能性を示唆した。また、茶カテキン(EGCG)による破骨細胞の分化抑制作用、キサントフィルの骨量維持および骨破壊抑制効果などを紹介した。
基調講演では、農業・食品産業技術総合研究機構食品研究部門の山本万里氏が、機能性表示食品制度における農林水産物の活用状況について報告した。生鮮食品受理数は、ミカン、大豆もやしをはじめ、メロン(機能性関与成分:GABA;精神的ストレス緩和)、鶏胸肉(イミダゾールジペプチド;ストレス緩和)など、種類が増え累計受件数は48件になったことを報告。また、単一の農林水産物のみが原材料である加工品も緑茶(メチル化カテキン;ハウスダストによる目や鼻の不快感軽減)をはじめ、冷凍ホウレンソウ、蒸し大豆などが受理されていると述べた。同氏は、「含まれる機能性成分によって機能性表示食品、栄養機能食品に使い分けるなど、事業者は戦略的な販売をしている」と事例商品を交えて説明した。同機構では、活用できる研究レビューを公開しており、トマトリコピン、鶏肉イミダゾールジペプチド、緑茶カテキン、さつまいもアントシアニンなども2019年度内に公開予定だという。また、「ガイドライン修正により、γ‐オリザノールの研究が活発化しており、生鮮食品の機能性表示食品の受理に期待したい」と述べた。今後の課題では、農林水産物中機能性成分のばらつきの安定化、分析法等の国際規格化のほか、健常者での有効性をどうように実証するかなどを挙げた。
一般演題では、城西大学大学院らの研究成果として、テオブロミンの摂取が骨髄由来体性幹細胞の分化能に与える影響について講演。マウスを用いた実験結果からテオブロミンの摂取により、骨髄中の間葉系幹細胞の増殖能を高め、骨芽細胞分化を促進させることで骨密度を増加させる可能性が示唆された、とした。
サントリーウエルネス健康科学研究所の出雲貴幸氏は、機能性表示食品『ロコモ』のエビデンスデータを紹介した。ヒト臨床試験を実施し、プラセボ群と比較して膝関節症状の改善や、通常歩行速度が改善した。同氏は今後、「筋力やその他、運動機能に対するエビデンス取得に向けて検討している」という。
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January 15, 2020 at 03:37PM
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